名取芳彦著 『心が穏やかになる空海の言葉』を読む

 現役僧侶による空海の名言の解説。空海は、地ー固さ・安定性、水ー湿度・下降性、火ー温度・上昇性、風ー動く・流動性、空ー広がり・空間性、識ーすべてを統一しようとする力・生命力、これらの構成要素とそのあり方の教え(六大無碍にして常に瑜伽なり)に出合うことで、世の中のあり方についての疑問を晴らした。

(この身は)必ず四恩の徳に資ってこの五陰の体を保つ。 『教王経開題』

私たちには体があります。これを色と言います。まず目でトーストを見ます。目で像を受け取るのが受です。その情報が視神経を通して脳に送られるのが想。これでようやく、トーストが見えたと認識しています。これを行。そして、過去の知識から、食べられる、バターを塗るとよりおいしい、飲み物はコーヒーがいい、などと判断します。これが識です。色と受、想、行、識の五つが、変化しながら、仮にまとまっている(五陰)のが、”今この瞬間の自分”なのです。

いわゆる四恩とは、一には父母、ニには国王、三には衆生、四つには三宝なり。 『教王経開題』

四恩とは、一に父母の恩、ニには国王(国)の恩、三には生きとし生けるもの(衆生)の恩、四つには仏法僧の三宝の恩です。

それ生は我が願いにあらざれども、無明の父、我を生ず。死は我が欲するにあらざれども、因業の鬼、我を殺す。   『教王経開題』

仏教では、自分のご都合どおりにならないことを「苦」と定義しています。なるほど、私たちが苦しいと感じるのは、ことごとく「自分のご都合どおり」になっていない時です。その代表格が「生まれ、老い、病気になり、死ぬこと」の四つ。四苦の最後の死という苦が起きるのはなぜか・・・・・・と昔のお坊さんたちは「なぜ、なぜ」を十二回繰り返しました。それは生まれたから。なぜ生まれたか、性の営み(愛)があったから。そのようにして到達した、根源的な理由は「無明=(真実の世界を)わかっていない」

からでした。これを十二因縁と言います。

生は楽にあらず、衆苦のあつまるところなり。 『教王経開題

苦を減らそうと思うのなら、「ご都合」を少なくしていけばいいのです。これを「小欲知足」といいます。欲を小さくして足ることを知れば、「もうこれで充分だ」と思えるので苦がなくなります。

偉大な僧侶、空海の名言と分かりやすい仏教思想の解説が付された本書は、仏教ファンのみならず、この世での「生き方」を模索している方々にも是非とも読んでもらいたい一冊であります。


宝島文庫      定価 618円

KAZUMAの読書日記

冒険、スリラー、ジョギング、エッセーなどなど、気の向くまま、多ジャンルの読書を続けてきましたが、オススメできそうな本を備忘録風にご紹介いたします。

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