仏教思想を中心に据えて「生き方」の人生哲学を説いた指南書。著者によれば、労働には、欲望に打ち勝ち、心を磨き、人間性をつくっていくという効果がある。働くことで得られる喜びは格別であり、遊びや趣味ではけっして代替できない。まじめに一生懸命仕事に打ち込み、つらさや苦しさを超えて何かを成し遂げたときの達成感。それに代わる喜びはこの世にはない。日々の労働の中にこそ、心を磨き、高め、少しでも悟りに近づく道が存在している。「悟りは日々の労働の中にある」のだ。
これからの日本と日本人が生き方の根に据えるべき哲学をひと言でいうなら、「足るを知る」ということであろう。また、その知足の心がもたらす、感謝と謙虚さをベースにした、他人を思いやる利他の行いであろう。
因果が応報するには時間がかかる。このことを心して、結果を焦らず、日ごろから倦まず弛まず、地道に善行を積み重ねるよう努めることが大切。
因果応報の法則が成り立つのは、それが自然の摂理に沿ったものであるから。長いスパンで見たら、善因が悪果を招いたり、悪因が善果を呼ぶような因果のねじれを起こらず、すべて善因善果、悪因悪果と順説でつながるのは、それがそのまま天の理や意に沿ったものであるから。
宇宙には、一瞬たりとも停滞することなく、すべてのものを生成発展させてやまない意志と力、もしくは気やエネルギーの流れのようなものが存在する。しかもそれは「善意」によるものであり、人間をはじめとする生物から無生物に至るまで、いっさいを「善き方向」へ向かわせようとしている。よいことをすれば、よいことが起こる因果応報の法則が成立するのも、また、素粒子が素粒子のままとどまらず、原子、分子、高分子と結合をくり返し、いまもなお進化をやめないでいるのも、その流れや力に促されてのことなのだ。
森羅万象あらゆるものを成長発展させよう、生きとし生けるものを善の方向へ導こう―それこそが宇宙の意志であり、いいかえれば、宇宙にはそのような「愛」「慈悲の心」が満ちている。
宇宙には、物質をも生命体のように見せてしまう、すべてを「生かそう」とする、静かで強靭な意識、思い、愛、力、エネルギー・・・・・・そういうものが、目には見えないが確実に「ある」と、私には感じられる。
人間の心は多重構造をしていて、同心円状にいくつかの層をなしているものと考えられる。
すなわち外側から、①知性―後天的に身につけた知識や論理②感性―五感や感情などの精神作用をつかさどる心③本能―肉体を維持するための欲望など④魂―真我が現世での経験や業をまとったもの⑤真我―心の中心にあって核をなすもの。真・善・美に満ちている
ここで肝心なのは、心の中心部をなす「真我」と「魂」。この二つはどう違うのか。真我はヨガなどでもいわれているが、文字どおり中核をなす心の芯、真の意識のこと。仏教でいう「智慧」のことで、ここに至る、つまり悟りを開くと、宇宙を貫くすべての真理がわかる。仏や神の思いの投影、宇宙の意志のあらわれといってもよい。仏教では「山川草木悉皆成仏」、すなわちありとあらゆるものには仏性が宿っているという考え方をするが、真我とはその仏性そのもの、宇宙を宇宙たらしめている叡智そのものである。すべての物事の本質、万物の真理を意味してもいる。それが私たちの心のまん中にも存在している。
真我は仏性そのものであるがゆえにきわめて美しい。それは愛と誠と調和に満ち、真・善・美を兼ね備えている。人間は真・善・美にあこがれずにはいられない存在だが、それは、心のまん中にその真・善・美そのものを備えた、すばらしい真我があるからにほかならない。あらかじめ心の中に備えられているものであるから、私たちはそれを求めてやまない。
働くことの大切さ、他人を思いやることの大切さ、つねに感謝の気持ちを忘れないでいることの大切さなどを説いたタメになる人生哲学の一冊である。是非、皆さまもご一読を!
サンマーク出版 1700円+税
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