世界43ヵ国で刊行されたベストセラー小説『ミッドナイトライブラリー』を原文で読みました。主人公のノラは、小さい頃から学問、スポーツ、音楽の才能に秀でた優秀な女性でした。ある日、人生について考えていたノラのもとに愛猫であるヴォルテールに関する悪い知らせが届きました。隣人であるアッシュが猫が車にひかれたことをノラに告げたのです。そのことで、ノラは精神的に落ち込みました。
深夜12時、ノラは薬を飲み、自分の自殺願望を綴ったメモを書き残し、意識を失います。
目を覚ますと、ノラは不思議な場所、ミッドナイトライブラリー(真夜中の図書館)にいました。そこには、司書のエルム夫人がおり、棚にはラベルのない不思議な本たちが並んでいます。その中の本、「後悔の書」はノラを「自分がそうなっていたらよかったであろう」という別の人生に連れて行ってくれます。いわば、このミッドナイトライブラリー(真夜中の図書館)は、意識世界と死の世界の狭間にあるのです。ノラが経験した数々の「あり得たであろう人生」。オリンピックの水泳のメダリスト選手。極地で調査活動をする氷河学者。売れっ子のロック歌手。ワイン農園の農場主の妻となってワイン農園を訪れる観光客らをもてなす人生。そして、愛娘を生んで暖かい家庭を持った自分。しかし、そのどれもが現実の人生ではなかったのです。「後悔の書」の中の人生では、生き生きとした人生を送ったノラですが、最後は現実の世界の小さなフラットで暮らしているノラに戻ってしまいます。「つらいこと」があっても、いまの現実の人生を精一杯生きること、私はこの本を読んでそんな感想を持ちました。「もし自分がそうなっていたならば、自分はこうしていたであろう」という可能世界について考えさせてくれる本です。是非、ご一読をオススメします。
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