「なぜ我々は働くのか」という問いかけで、著者の「仕事の思想」を書き著した本。著者によれば、まず第一に「仕事の報酬は、能力である」ということです。この「仕事の報酬は、能力である」という世界は、仕事の能力を磨くことが楽しくなってきたときに見えてくる世界です。例えば、企画力や営業力などの高度なスキルやノウハウが求められる仕事は、それができるようになるのは大変ですが、ひとたびその能力を身につけると、大きな喜びを味わうことができます。新しいスキルやノウハウを身につけることの面白さが味わえるのです。
第二に「仕事の報酬は、仕事である」ということです。これは、仕事のスキルやノウハウを身につけ、仕事の能力を磨いていくと、その向こうにさらに新しい世界が見えてくるということです。著者の友人が語った「最近になって、ようやく仕事が見えてくるようになったよ。振り返れば、昔は、見えていなかったことがたくさんあったんだな……。いまは、仕事の裏の動きや、仕事の先の展開が、いやになるほどよく見えるんだよ……」「いまは、仕事をどう仕掛ければよいかが、よくわかるようになったよ。だから、ようやく、やりたい仕事がやれるようになってきたんだ……」という言葉は、まさに「仕事の報酬は、仕事である」という世界を表しています。
第三に「仕事の報酬は、成長である」ということです。「こころの世界」が見えてくることによって、「うまく働くこと」ができるようになる、これが、「仕事の報酬は、成長である」ということです。
著者によれば、「顧客との共感」を通じて、私たちは、「こころの成長」を遂げていくことができるそうです。「顧客と共感する」とは、「顧客からの共感を得る」ことではなく、「顧客に共感する」ということなのです。「顧客を説得しよう」「顧客を動かそう」と考えるのではなく、まず、無条件に、顧客に深く共感する、そのことがとても大切なのです。
著者によれば、「人間としての成長」を考えるとき、理解しておくべき大切な言葉が二つあります。それが、「人間力」と「人間学」です。「人間学」とは「人間観察」ではなく、「人間」というものを深く見つめるということです。「人間」というものを深く見つめることによって、人間というものを深く考える、これが「人間学」の基本なのです。それは、「性格の分類」や「人間の類型化」ではないのです。「人間力」を身につけていくために最も大切な「格闘する」という言葉の意味は、相手の「こころ」と正対するということです。
最後に、著者のこの言葉を胸に刻んでおきましょう。
人間との格闘こそが、人間力を磨くための唯一の道である。
仕事というものを通じて、人間は成長していく、そのことを考えさせられる良書と言えます。ご一読をオススメします。
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