小泉武夫著『納豆の快楽』を読む

納豆の歴史、栄養素、美味しい食べ方、数々の納豆料理(納豆ライスカレー、納豆の天ぷら、漬け物納豆、納豆の雑炊、納豆巻き、納豆スパゲッティ、納豆サンドイッチ、納豆鍋等)が紹介された本です。納豆好きにはたまらない一冊。

最後に本書から納豆の栄養素について書かれた部分を引用しておきます。

「『納豆はからだにいいんだ』、『何がなくともまず納豆よ。納豆は栄養あるんだから』などという納豆礼讃、絶賛の言葉をよく聞きます。本当に納豆はそんなに滋養のある食品なのでしょうか。そうなんです。じつは言われている通りなんです。

まずエネルギー量(カロリー)は糸引き納豆で200キロカロリーで、茹でた大豆180キロカロリーより多く、同じ大豆加工食品の豆腐に比べると約3倍、味噌とほぼ同等であります。タンパク質が100g中16~17g(16~17%)あり、他に10g(10%)が脂質と糖質です。約60%は水分ですのでタンパク質の占める割合は非常に大きいことがわかりますが、このことは、納豆を飯にかけて食べ、肉をあまり摂取してこなかったデンプン質主体の日本人にとっては意義の大きいことであったのです。

と申しますのは、たとえば牛肉の場合、和牛で18~20%のタンパク質を含みますが、これに比べて納豆はそう遜色のないものなのです。『大豆は畑の牛肉』とよくいわれますが、まったくその通りなのですねえ。その上、牛肉には脂肪が多くあるのでカロリーのとり過ぎに注意が必要だとか、コレステロールが多いので注意しなさい、などととかくいわれるのですが、その点、納豆は大丈夫なのであります。脂質は二分の一から三分の一、コレステロールはほとんどありません。

また納豆はタンパク質が多いので、それにともなって遊離アミノ酸も群を抜くほど多いのです。イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリンといった代表的なアミノ酸が非常に多く、中でもグルタミン酸は他の多くの食品に比べて特異的な多さを示しています。このアミノ酸はご承知のように『うま味』の本体のひとつでもありますので、納豆がうまいわけです。

納豆の栄養で特筆すべきものは、他に無機質があげられます。納豆100g中カルシウム90mg、リン190mg、鉄3.3mg、ナトリウム2mg、カリウム660mg、マグネシウム100mg、亜鉛1.9mg、銅0.61mgといった具合なのです。このミネラルの中でとくに注目されますのは亜鉛であります。このところ日本人の亜鉛不足が話題になっておりますが、じつはこのミネラルが不足いたしますと本当に恐いことになるのです。『味盲症』または『味覚失調症』というそうですが、いくら美味しいものを食べてもその味を感じないという症状の病気が亜鉛不足によって起こるとのことです。

私の渾名は『味覚人飛行物体』でありますから、もし亜鉛不足によってそんな恐ろしいことになったらば、もうその時点で『味覚人』といううれしい名は捨てなければなりませんから、納豆をいっぱい食べていて本当によかったなあと感謝しているのであります。」
bloggerにて2022年4月10日 公開

 講談社文庫 610円+税

KAZUMAの読書日記

冒険、スリラー、ジョギング、エッセーなどなど、気の向くまま、多ジャンルの読書を続けてきましたが、オススメできそうな本を備忘録風にご紹介いたします。

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