高野秀行著『アヘン王国潜入記』を読む

ビルマのワ州のムイレ村に著者が潜入して、村人に混じってケシ栽培をする模様が描かれている。

村人と地元の酒、プライコーを飲み交わしたり、アヘンを吸ってアヘン中毒になったり、ケシ畑の草取りに精を出したり、「ガッ・ペン」というアヘンの液汁を採集する作業をしたり、ムイレ村初の学校でワ人の子供たちにワ語を教えたりと、ビルマのワ州の小さなムイレ村での生活模様が詳細に描かれています。ビルマの少数民族の生活実態を知りたい方には必読の一冊です。

最後に本書から興味深い箇所を抜粋しておきます。「ところで、プライコーの宴会だが、この村の人間は最初の一杯めは、じいさんのほど長くはないが、やはりお祈りみたいなものを唱え酒を床に滴らせる。こんな習慣はほかの村では見たことがない。何を言っているのかアイ・スンに文句を教えてもらい、メモに書き留めた。意味がわからないところも多いが、明らかにこう述べているくだりがあった。『おとうさん、おかあさん、おじいさん、おばあさん、お酒をどうぞお召し上がりください。そして、私たちに病気をもたらさないように。 私たちに死をもたらさないように』 意外なことに、彼らの『信じているもの』は精霊ではなく、祖先の霊だったのだ。まず、祖霊に酒を捧げてから自分がいただくわけで、基本的には日本人と同じである。母親と子はほっぽらかされ、主は酒注ぎ係に徹しているのを見ているうちに、何となくわかった。当事者は祖霊に感謝し、また集まってくれた人びとにも感謝する。集まったほうも当事者を祝福するのではなく、当事者に恵みを与えてくれた祖霊に敬意を捧げるようである。」

面白い外国滞在記です。是非、ご一読を!

 集英社文庫    840円+税

KAZUMAの読書日記

冒険、スリラー、ジョギング、エッセーなどなど、気の向くまま、多ジャンルの読書を続けてきましたが、オススメできそうな本を備忘録風にご紹介いたします。

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