御厨一家のお金をやりくりして生活していく様を描いた小説。まず、会社員の御厨美帆(23歳)は、奨学金の借金のあるグラフィックデザイナーの翔平との結婚に躊躇する。なんだかんだあり、最後は祖母の琴子(73歳)が自分の貯金をはたいて低金利でお金を貸してくれることになり、めでたく翔平との結婚にこぎつけることになる。
そして、姉の真帆(29歳)は、高校時代から付き合っていた消防士の太陽と子供を儲けて平穏に暮らしているが、久しぶりに学生時代の友人と再会して、ある友人が家が裕福な人と結婚したことを知り、はたして「自分の太陽との結婚は正解だったのか」と自問自答してしまう。学生時代の友人との格差がリアルに描かれている様は、現代の人々の生活の経済格差の様がそのまま反映されているように思う。
高度経済成長期にデパートで店員をしていた祖母の琴子(73歳)には、貯金が1千万円あるが、それでも琴子は老後の生活に不安を感じ、十条銀座商店街の和菓子屋でアルバイトをすることにする。年老いてもなお働こうとする琴子に人間の気概みたいなものを感じる。
母の智子(55歳)は、中年期のガンという大きな病を克服し、友人の離婚問題に直面し、自分も熟年離婚の問題を真剣に考えるようになる。離婚とお金の問題は、壮大なテーマであるということを改めて考えさせられる良い機会となった。
お金という普遍的なテーマを面白い小説に仕上げてくれた著者には脱帽するばかり。お金の使い方を真剣に考えている人には是非とも読んでもらいたい一冊である。
中公文庫 700円+税
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