汐見夏衛著 『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』を読む


 高校生の恋愛小説。思ったことは何でも口にするストレートな青磁となぜか病気でもないのにいつも外ではマスクをして、作り笑いを浮かべて本心を押し隠す内向的な性格の茜。その青磁と茜が高校生活の中でお互いに恋愛感情を持つようになるまでの話。青磁は思ったことは何でも口にするが、繊細な空の絵を描くのがとても上手い。そんな青磁の美しい空の絵を見た茜は、だんだん青磁に惹かれていく。二人は最初は楽しそうに触れ合っていたが、ふとしたことがきっかけで青磁が茜のことを避けるようになる。そのふとしたこととは、実は、青磁が中学生の頃に患った脳腫瘍のことで、青磁はその脳腫瘍が、いつまたなんどき再発するかもしれないと怖れ、こんな情けない自分は茜には見せられないと考え、茜を避けるようになったのだ。そして、茜を避け、病気の再発を恐れていた時分に描いた『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』という作品が、県の高校美術展の大賞に内定し、その情報を聞きつけた茜は、美術館までその作品を見にいくことになる。その作品には美しい朝焼けと小学生の頃までのあどけない純粋無垢な茜の姿が描かれていた。その絵を見た茜は、青磁に今すぐにでも会いたいと思いを募らせ、いつも着けていたマスクを外す決心をし、茜を避けていた青磁と対面することになる。

実は病気の再発のことを恐れながら、表面上はあっけらかんとした青磁と小学生の頃は思ったことは何でも口にすることのできた内向的な性格の茜との対称性が、生き生きと鮮やかに描かれ、恋愛小説としては秀逸な仕上がりとなっている。自然の美しさを堪能したい、淡い恋物語を味わいたいという方に、オススメの一冊である。


スターツ出版株式会社  700円+税

KAZUMAの読書日記

冒険、スリラー、ジョギング、エッセーなどなど、気の向くまま、多ジャンルの読書を続けてきましたが、オススメできそうな本を備忘録風にご紹介いたします。

0コメント

  • 1000 / 1000